札幌中央区のセミパーソナルジム
hoppy_logo_header

札幌中央区のセミパーソナルジム

筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち|第4話「あのバトンが、いまも落ちたままなんだ」

Hoppyの物語

2025年5月4日

HOPPYの仲間たち|~ジムで見つけた僕の居場所~

第4話「あのバトンが、いまも落ちたままなんだ」

「ルルさんって、ほんとにストイックだよねぇ」

モッティが言うと、ボニーがうんうんとうなずいた。

「トレーニング中に声かけたら、ガチで見えないふりされるブー」

ふたりの視線の先で、ルルはひとりスクワットを繰り返していた。
汗をかいても顔色ひとつ変えず、誰にもペースを乱されることなく。

でもルルは、知ってる。
誰にも気づかれずにいるほうが、ずっと楽なことも。

高校のころ、陸上をやっていた。短距離と高跳び。
背は小さかったけど、脚力にはちょっと自信があった。

だから――リレーのアンカーを任された。

あの日、最後のバトンを落としたのは自分だった。

すべてが止まって見えた。
時間も、仲間の声も、自分の脚も。

画像

「…それから、走るのやめたんだよね」

スクワットで追い込むたび、あの時の悔しさが脚に宿る。
プルプル震えるのは、筋肉のせいだけじゃない。
(いや、筋肉のせいでもあるけど…)

「今日も、バトンは拾えてないかもな」

ルルは笑った。誰にも聞こえないように。

でも――その笑顔の奥で、何かが少しずつ動き始めている。

その日のトレーニングを終えたあと、ルルは静かに帰ろうとした。
ふと振り返ると、ジムの片隅でモッティがストレッチしていた。

初めてスクワットをしたあの日から、なんだかんだで来てるみたいだ。

ルルは少しだけ足を止めた。

画像

「……いいスクワットしてたよ」

その言葉にモッティはびっくりして顔をあげた。
ルルはそれ以上なにも言わず、外に出た。

夜の風が、ふくらはぎをすっとなでた。
あのころ感じた風とは、少し違った。


今日のひとこと
「悔しさは、脚に残る。スクワットのたびに、あの日が近づく。」

次回 第5話 「話すって、こわい。でもちょっとだけ、楽になる」

マンガ第1章入会編