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筋トレ倶楽部Hoppy

ようこそHOPPYジムへ ──その扉の奥には、物語がある 1-3

Hoppyの物語

2026年2月8日

第3話「モッティの約束~妹こももの想い~」

モッティは朝5時半に目を覚まし、静かな部屋の中で背筋を伸ばした。軽く腹筋とストレッチを済ませたあと、まだ薄暗い道を歩いてHOPPYに向かう。7時までの限られた時間で、ルーティンのトレーニングをこなす。鉄の重さが、身体だけじゃなく、自分という存在の輪郭を確かにしてくれる気がしていた。

帰宅すると、ダイニングには湯気の立つ味噌汁とおにぎりが並んでいる。母が早起きして用意してくれたものだ。妹のこもも(10歳)はリビングで髪を結んでいて、ランドセルを背負う前のいつもの朝の光景が広がっていた。

「おはよう、お兄ちゃん」

「ああ、おはよう、こもも」

こももはおにぎりを頬張りながら、ふと思い出したように口を開いた。

「昨日、テレビに梅島なな子さんが出てたの。モデルさんなんだけどね、スタイルがすっごくきれいで……スクワットが秘訣なんだって!」

「へえ、有名な人だよな、たしか。」

モッティが味噌汁をすすりながら相槌を打つと、こももは少し照れたように笑った。

「だから、私もちゃんとやろうって思ったの。今日の夜も、スクワット教えてね?」

「もちろんさ」

三人で朝食を手早くとり、こももは8時に「行ってきます!」と元気よく玄関を飛び出した。徒歩5分の小学校へ向かうその背中を、モッティと母は見送った。

モッティの職場は市役所の窓口。9時から17時まで、住民対応や事務手続きに追われる。昼休み、自席で昼食をとりながら、ふと朝のトレーニングを思い返す。筋トレは、誰かに褒められるためじゃない。自分の中にある“責任”とか“弱さ”とか、そういうものと向き合うための時間だった。

定時きっかりに職場を出ると、学童へと足を向ける。門の前で待っていたこももが、モッティに気づいて駆け寄ってきた。

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「お兄ちゃん!」

「おかえり、こもも」

歩きながらモッティは、今朝早くに作っておいた卵サンドをリュックから取り出した。ラップにくるんで、ちょうどこももの手に収まるサイズだ。

「はい、これ」

「わぁ、ありがとう!」

こももは嬉しそうにそれを受け取り、にっこり笑ったあとかじりついた。二人で一つを半分こするのが、いつの間にか日課になっていた。「お兄ちゃんと半分こじゃなきゃ食べない!」と、こももが言いだしたからだ。

卵のやさしい甘さが広がる。何気ないその光景が、モッティの胸の奥を温かく満たした。母の残業がある日も、こももが寂しい思いをしないように――それだけを思って始めた習慣だった。

家に着くと、ランドセルを置いたこももが声を上げた。

「ねえ、お兄ちゃん、今日もスクワット教えて!」

「よし、じゃあマットの上に立って。いつもの通りね」

リビングの隅に敷かれたトレーニングマットの上に立つこももに、モッティはゆっくりと声をかける。

「足の裏全体で床を押すイメージで。お尻を少し後ろに引いてから膝を曲げる」

こももは真剣な目つきでしゃがみ、立ち上がる。幼いフォームではあるけれど、その中にちゃんと意志がある。自分も強くなりたい――そんな思いが、その小さな身体から伝わってくるようだった。

筋トレは、モッティにとって自分を強く保つための道だった。シングルマザーの母に頼りきりにならないように。こももに、寂しい思いをさせないように。だからこそ、心が弱っていても身体だけは折れないようにと、鉄を握ってきた。

リビングのドアが開く音がして、こももが顔をあげる。

「ママ! おかえり!」

母が帰宅し、こももが駆け寄って抱きつく。モッティはその光景を見ながら、静かに食卓の準備を始めた。

20時には三人で夕食を囲む。こももは今日も元気に話し、笑い、食事を楽しんでいた。

(あの言葉……「自分を許す」)

岡田氏が、ぽつりと発したその言葉。今でも意味はよくわからない。でも――もし、自分が“守らなきゃ”って力みすぎていたら、肝心のこももの笑顔を見落としてしまうのかもしれない。強くあろうとする気持ちは大切だ。でも、力を抜く場所も必要なのかもしれない。自分自身を責めすぎずにいられる場所――それが、この食卓の温かさなのかもしれない。

「ねえ、お兄ちゃん、明日もスクワットしていい?」

「もちろんさ」

モッティは笑ってうなずいた。妹の笑顔と、自分の小さな決意を胸に、また明日を迎える準備を始めた。

つづく

第4話「ボニーの哀愁~赤いコップに託した想い~」

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