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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち|第14話 「誰かの言葉が、胸に残った」

Hoppyの物語

2025年7月20日

HOPPYの仲間たち|~ジムで見つけた僕の居場所
第14話 「誰かの言葉が、胸に残った」

ジムにひとり。
BONNYはいつもよりゆっくりと動いていた。
今日は、誰も来ない時間を狙っていた。


「ベンチ、ちょっと軽めでいくブーか……」

バーベルを握る手に、少しだけ力が入った。

岡田氏の言葉が、頭の奥で何度もリフレインしていた。

「まじめにやってる人ほど、“もうちょっとだけ違う視点”が必要なんだよ」

違う視点――。
なんだろう。
ずっと、まじめにやってきた。
痩せた。体も変わった。
でも心の中は、どうだろう。


ラックにバーを戻して、そっとベンチに腰を下ろす。
額から汗がつぅ、と落ちた。


昔のことが、ふとよみがえる。

がむしゃらに働いて、家には寝に帰るだけ。
あのころ、自分がどこに向かっていたのかもわからなかった。

鏡に映る自分の体が、だんだん大きくなっていくのが
ただ、こわかった。

どこかで“こんな見た目じゃ、嫌われる”って
勝手に思っていた。


あの人は――何も言わなかったのに。


「……はぁっ」

BONNYは、棚の上の戸に目をやった。
奥には、ずっと仕舞われたままの、赤い小さなコップがある。

画像

そのコップを最後に使ったのは、
まだちいさな声がこの部屋に響いていた頃だ。


娘の手に、ぴったりだった。
「これ、ぼにーのぶん!」って、笑っていた。
言い方がまだ拙くて、でもまっすぐで。

今はもう、会えていない。


すれ違った。
逃げたのかもしれない。
相手が変わったのか、自分が変わったのか。
答えは今でもわからない。

けれど――


「……重さって、裏切らないブーな」
「がんばったぶんだけ、ちゃんと返してくれる」

BONNYの声が、しんとしたジムに響いた。

涙がこぼれそうになって、あわててタオルで目をぬぐった。


「……ちっ、汗が目に入っただけブー」


そのまま、ごろんと床に寝転ぶ。
天井の白いライトが、ゆらゆらにじんだ。


「モッティ、最近ちょっと顔つき変わってきたブーな……」
「よし、明日はあいつの補助でもしてやるか」

ちょっとだけ笑って、
もう一度、天井を見た。

今日のひとこと
「過去は変えられない。でも、自分は変えていける」


次回 第15話 「上手くできるのになんか違う」

マンガ第1章HOPPY入会編