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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち|第27話「言わなくても、わかるから」

Hoppyの物語

2025年10月19日

HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第27話「言わなくても、わかるから」


「あと三回いける!下がるな!踏ん張れ!」

叫び声が反響する鉄の部屋。
鏡に映るのは、無数の背中。バーベルが振動し、地面が揺れる。

IRON HELL。
“追い込み”が信仰のように行われるジム。
誰も目を合わせない。ただ音と声と重圧のなかで、必死に耐えている。

リストラップを締め直す音、床に汗が滴る音、シャウト。
その中でルルも、ひたすらに動いていた。

顔は見えない。
だが、無言のまま足を踏み出し、手を伸ばし、鉄を持ち上げる。

「その程度じゃ、まだ“変わらない”。限界の向こうまで行け」

クロノスの声が響く。
ルルは一度だけ息を吐いて、再び立ち上がった。

画像

HOPPYのジムは、その日も変わらず開いていた。

カラフルなプレートが並ぶラック。柔らかい音楽。
だけど、どこかが少しだけ、静かだった。

「……なんか、広く感じるブーね」
ボニーがぼそりとつぶやいた。

「ルルくんの声、今日は聞いてないですからね」
モッティが、いつものようにやわらかく笑う。

二人ともそれ以上は何も言わない。
でも、それだけで充分だった。

ボニーの視線が、奥の棚に残されたピンク色の水筒に向いた。

「忘れ物……かな」
「……きっと、また取りに来ると思います」


その夜。誰もいないジムのカウンター前に、岡田氏が立っていた。

ホワイトボードの前で、ひとり、黒いマーカーを走らせる。

「体幹強化」
「柔軟性アップ」
「軸の再構築」

その下に、“?”をつけた何かの構成案。

しばらくそれを見つめたあと、岡田氏はそれを静かに消す。
ふっと微笑んで、ひとこと。

「……まだ、タイミングじゃないな」


今日のひとこと

「静けさの中で芽吹くものが、きっとある。」


次回   第28話  「お前………本物……か?」

マンガ第2章アイアンヘル編