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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち 第16話「話すつもりはなかったけど」

Hoppyの物語

2025年8月3日

HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第16話 「話すつもりはなかったけど」

 

夕方のジム。トレーニングを終えた後の静かな時間。

LULUとフクロカさんは、壁際の長いベンチに並んで座っていた。
話すわけでもなく、ただ隣にいる。

休憩というより、風の抜ける隙間に心を預けているような空気。


フクロカさんが、ふと口を開いた。

「LULUくんって、最初からスクワット派だったの?」

「え……ああ。まあ、そうですね」

「なんとなくじゃ、続かない気がして?」

LULUは、少しだけ目線を落としたまま、うなずいた。

「……ですよね。うん。そうなんですよ、実は…」


「……あの、別に相談とかじゃないんですけど」

画像

「うん」

「なんで僕、スクワットやってるんだろうなって、ふと思って」

フクロカさんは、何も言わず、ただうなずいてみせた。


「僕、中学からずっと陸上やってて。短距離と、高跳び。
リレーではアンカーもやらせてもらってました」

「……じゃあ、走ること、好きだったんだ」

「好きでした。……でも、最後の大会でバトンミスして、
それで、自分が一番信じられなくなって……」


LULUの手が、無意識にベンチの端を握っていた。

「それ以来、走るのは封印してました。
……足も、あの頃より細くなってたし、
自分の脚が頼りないのが、情けなくて」

「それで、スクワットを?」

「……強くなりたかったんですよ。
もう一回、脚を鍛えて、“走る”って言えるような足に戻したくて」


フクロカさんがそっとLULUの手元を見た。
握られた指先が、ほんの少しだけ震えている。


「でも、スクワットって、めちゃくちゃキツくて。
毎回やるたび、心の奥のほうがぐらぐらするんですよ」

「それでも続けたのは?」

LULUは、小さく笑った。

「……なんでしょうね。
ほんとは、走りたいのかもしれないです。
もう一度、走ってみたいんだと思います」


フクロカさんは、そっとLULUの背中に目を向けた。

何も言わないけれど、
その沈黙は、肯定だった。


今日のひとこと
「言葉にすることで、忘れていた気持ちが、帰ってくることがある。」

第17話 「壊れたベンチと、あの気配」

マンガ第1章HOPPY入会編