HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第20話「岡田氏のパーソナル×モッティ × デッドリフト編」
「モッティ、ちょっとこっち来てみて」
岡田氏が、空いているデッドリフトエリアから手招きした。
「こないだ、BONNYに言われてやってみたんだって?
デッドリフト、けっこうスッと上がったって聞いたよ」
「……あ、はい。なんとなく…ですけど、重くてもスクワットより楽に感じたんです」
モッティは少し照れたように笑う。
岡田氏は軽くうなずいた。
「実はそれ、“なんとなく”じゃないんだよ。ちゃんと理由がある」
モッティがきょとんと首をかしげる。
「モッティって、脚が短めで、腕が長いでしょ?」
「……えっ、そ、そうですね…たぶん」
「その体型、実はデッドリフトにすごく向いてるんだ。
動作の始点が低い分、床から引く距離が短くて済む。
さらに、腕が長いから腰を落としすぎなくてもバーが握れる。
つまり――モッティの骨格は“引く動作”にすごく合ってるってこと」
モッティは目を丸くした。
「そ、そんなふうに考えたことなかったです……!」
「それに、モッティは内ももが強い。
前にやったとき、自然と足幅広めのフォームになってただろ?」
「あ……はい。僕、最初からその方がやりやすくて」
「それも、体が自然に“得意な動き”を選んでる証拠なんだよ」
岡田氏は言葉を続けた。
「スクワットのとき、腹圧の扱いで苦戦してたよね?
でも、デッドリフトなら“内側の強さ”と“構造の良さ”で、かなり優位に動ける」
モッティは、もう一度バーの前に立った。
フォームを調整しながら、バーを握る。
「……よいしょっ」
すっと引き上がるバー。
その手応えは、前よりもずっと確かなものだった。
「僕……ほんとに、デッドリフト得意かもしれないです」

モッティが笑った。
岡田氏も、うれしそうにうなずいた。
今日のひとこと
「なんとなくできた」が「だからできる」になるとき、人は強くなれる。
次回 第21話 岡田氏のパーソナル×ボニー× ベンチプレス編