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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち |第23話「あっちのジム、すごいらしいね」

Hoppyの物語

2025年9月21日

HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第23話「あっちのジム、すごいらしいね」


「アイアンヘル、もう行った?」
誰かのつぶやきが、ジムの空気をかすかに揺らした。

BONNYがプレートをラックに戻す手を止める。
LULUは、伸ばしかけた脚を静かに引っ込めた。


「またその話か……」
BONNYがぼそっと言った。

LULUはスマホを取り出し、画面を静かにスワイプする。
黒を基調としたジムの写真、まばゆい照明、汗を飛ばしながら追い込む人々の動画。

画像

「……すごいですね。
本気の人って、ああいうとこに行くのかなって、ちょっと思ったりします」

LULUの声に、BONNYが腕を組む。

「見た目は確かにキマってるブーね。
だけど“空気”が違いすぎる」


しばしの沈黙の後、モッティがベンチから顔をあげた。

「……僕、昨日、近くまで行きました。アイアンヘル」


「えっ!?」
LULUとBONNYが同時に振り返る。

「見学に行ったんですか?」

「いや、入口の前まで。
実はちょっと、どんな感じなのか気になってて……」


モッティはタオルで汗をぬぐいながら、ゆっくり話し出す。

「前まで行ったら、中から声が聞こえてきたんです。
“あと三回!” “負けるな!” “まだできる!”
……すごい声量で。全員、追い込まれてるみたいでした」


「……入る気、なくなりました」

画像

「僕、限界まで頑張るっていうのが苦手なんです。
怖いというか、そこまでやると次の日、もうやりたくなくなっちゃう」


BONNYが静かにうなずく。

「オレも昔、そういうジムにいたブー。
でも、続かなかった。
怒鳴られて、鼓舞されて、火はつくかもしれないけど……
燃え尽きるのも早かったブーよ」


LULUが、少し考えるように目を伏せる。

「岡田さん、前に言ってましたよね。
“あと2回できるな、ってところでやめると、次も頑張れる”って」


BONNYがニッと笑う。

「岡田氏は“明日も来たいって思える力”が一番大事だって、よく言ってるブーね」


モッティも笑った。

「……やっぱり、僕にはこっちの空気のほうが合ってるみたいです」


外では、今日も風に舞う黒いチラシ。
けれど、HOPPYの中には、
追い込む声ではなく、続けたいと思える静かな余白が流れていた。


今日のひとこと
「明日また来たくなる場所。それが、本当に強くなれる場所かもしれない。」

次回 第24話 「正しさのすれちがい」

マンガ第2章アイアンヘル編