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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち |第25話「“その日”から、何かが変わった」

Hoppyの物語

2025年10月5日

HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第25話「“その日”から、何かが変わった」


その日、ジムの中は、いつも通りのはずだった。

ボニーはプレートをラックに戻し、モッティはおっとりとストレッチをしている。
ルルもいつものように黙って準備運動をしていた。

けれど、誰もがどこかで気づいていた。

「昨日、あの人が来てから、空気がちょっとだけ変わった」


「ルル、最近メニューの進み早いね」
ボニーが軽く声をかけた。

「そうですか?」
ルルは一瞬だけ ボニー を見て、すぐに視線を逸らした。

「うん、なんか、ひとりで先に行ってる感じブーよ」

「………うん」
その返事は、どこかよそよそしかった。


モッティがゆっくり立ち上がって、柔らかい声で言う。

「ルルくん、今日なんか元気ない?」

「………ン。実は……」

ルルは、一拍置いてから、まっすぐ岡田氏の方へ歩いていった。


「岡田さん」

「どうした?」

画像

「僕……少し、外のジムに通ってみたいんです」


その言葉に、空気が凍った。

ボニーも、モッティも、何も言えない。

岡田氏だけが、静かにルルを見ている。

「IRON HELLに行くのか?」

「……はい。
理由は……ちゃんと言えないかもしれません。
でも、昨日、あの空気を感じた時、
“ここじゃない場所”を、確かめたくなったんです」


ルルは、ほんの少しだけ笑った。

「僕、自分では頑張ってるつもりでした。
でも、ここの優しさに慣れすぎて、
“頑張ってるように見せてるだけかも”って思うようになって」

「誰も責めてないのに、勝手にしんどくなって。
だから……違う空気に身を置いてみたくなりました」


岡田氏は、しばらく黙っていた。


「……わかった」
そう言ったときの声は、いつも通り優しかった。

「ただ、ちゃんと“自分を見失わないように”な」


ルルは深く一礼し、そのままジムをあとにした。

ボニーもモッティも、声をかけることができなかった。


そして、その夜。
フクロカさんが、静かに記録ノートにペンを走らせていた。

小さな文字で、こう書き加えた。

「LULUくん、今日で一区切り。でも、これは終わりじゃない」
「帰ってくる場所は、まだここにある」


 

今日のひとこと
「誰かが扉を開けたその時、ジムの空気は、確かに変わった」

次回  第26話 「“その前の日”に話したこと」

マンガ第2章アイアンヘル編