HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~
第28話「お前……本物…か?」
朝のジム。
いつもより少し早い時間に、シャッターの音が響いた。
岡田氏が準備を始めようと扉を開けると、そこにいたのは――
「HELLO!ビジター!ジム、ツカッテイイ?」
…大きい。
明らかに全員の1.5倍はある筋骨隆々の身体、そして黒光りする毛並み。
「シングルユース!OK!?」
岡田氏が一瞬戸惑いを見せる。
モッティが目を丸くし、ボニーが「なんだブー!?」とタオルを握りしめた。
「こ、これは……外国の方ですブーね……」
ルルは言葉を発せず一歩下がる。誰もが言葉に詰まった瞬間。
「Hi there. You can use the gym. Please fill out this form first.」
穏やかな声が響いた。
全員が振り返る。
そこには、静かに歩いてきたフクロカさんの姿があった。
一瞬の沈黙。
だが、外国人男性――筋肉の鎧をまとったその男の目が、フクロカさんを見た瞬間、ピクリと動いた。
「……No way.」
彼はポケットから古びたスマホを取り出し、ある画像を見せる。
「Delta-9部隊、砂嵐の中で負傷兵を背負って戻ったって伝説……これ、あなたじゃ……?」
そこに映っていたのは、
若き軍服姿の女性。だがその目は、今のフクロカさんと同じだった。
「You’re… the Owl of Delta-9… aren’t you…?」
岡田氏をはじめ、全員が固まる。
「え?なに?えっ?何て言ったの今!?」
「フクロカさん……軍人だったの……?」
フクロカさんは静かに微笑んで、こう言った。
「昔、ちょっとだけね。……それより、トレーニングの話、しましょうか」
大柄なゴリラーマンは照れたようにうなずいた。
「Y-Yes, Ma’am… I mean… Yes!」
その後、誰も彼女に過去を聞くことはなかった。
ただ一つだけ、モッティがぽつりと漏らした。
「すごいね……やっぱり、ただ者じゃなかったんだね……」
今日のひとこと
ほんとうにすごい人ほど、静かに笑う。
次回 第29話「それは、ここだけの話」
(※HOPPYの中で密かに語られる、フクロカさんの“秘密”と“もうひとつの顔”)