HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~ 第22話
「黒いビラが、風に舞った」
その日、LULUがHOPPYにやってくると、
入り口に見慣れないチラシが貼られていた。
黒を基調とした、洗練されたデザイン。
文字は銀で印刷されている。
“結果が出ない場所で、時間を浪費していませんか?”
“最短で、最高の身体を。”
IRON HELL ー OPEN.
「なんだこれ……」
ルルがチラシを剥がそうとすると、
ちょうどボニーもやってきた。

「なんだ、またこの黒いの貼られてたブー?」
「“IRON HELL”…名前からして怖いね」
少し離れた位置に、1人の男が立っていた。
細身で長身。全身黒。
その体から感じるのは、温度のない威圧感。
男は、近くの掲示板にも同じチラシを静かに貼っていった。
「クロノス……だ」
岡田氏の声が、後ろから聞こえた。
ルルとボニーが振り返ると、岡田氏はチラシを手に取っていた。
「知ってるんですか?」
岡田氏はしばらく何も言わず、目を細める。
「昔、同じジムにいたことがある。
考え方の違いで、別の道を選んだ――そんなところだ」

遠くから聞こえるEDMの重低音。
IRON HELLのビルが、ジムの窓から見える距離にあった。
「でもさ、岡田さん」
ボニーが低くつぶやく。
「こういうの、気にする人も多いと思うブーよ」
岡田氏はふっと笑った。
「気にしていいさ。比べたっていい。
でも、“選ぶ”のは、自分自身だよ」
今日のひとこと
「黒い風が吹いたとき、自分の足元を見つめなおす。」
次回 第23話 「あっちのジム、すごいらしいね」