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筋トレ倶楽部Hoppy

HOPPYの仲間たち ~ジムで見つけた僕の居場所~第35話「名前を呼ばれる前に」

Hoppyの物語

2025年12月14日

HOPPYの仲間たち
~ジムで見つけた僕の居場所~
第35話「名前を呼ばれる前に」

ただ、そこにいるだけ。
何も話さなくても――それで許される場所が、ここだった。


ルルがHOPPYに戻ってから、数日が経った。
誰も「戻ってきたの?」とは聞かなかった。
いつの間にか、そこにいることが自然になっていた。

スクワットラックの横に立っていても、
ベンチに座ってストレッチをしていても、
「前と同じルル」がそこにいるだけだった。

でも――中身は、少しだけちがっていた。

「ここでは、うまく見せようとしなくていいんだな」

無理に言い訳を探す必要も、
誰かに認めてもらうための努力もしなくてよかった。

ある日、ジムに入ってきたばかりのルルを見て、
岡田氏が小さく手を挙げて言った。

「ルル、今日はデッドリフトやるかい?」

それは、何気ない呼びかけだった。
でもルルは、少し驚いたような顔をしたあと、ゆっくりと笑った。

「……うん、久しぶりにやってみようかな」

“ルル”という名前を、誰かに呼ばれる――
それが、こんなに温かくて、うれしいなんて思わなかった。

奥でフクロカさんがノートをめくっている。

画像

「ルルくん、今日は名前を呼ばれて、ちゃんと返事していた」

ページの端っこに、そう書き加えられた。


今日のひとこと

居場所は、誰かに名前を呼ばれて、はじめて実感できるのかもしれない。


次回 第36話「背中を向けるのは、もう一度前を向くため」

マンガ第2章アイアンヘル編