HOPPYの仲間たち 〜ジムで見つけたぼくの居場所〜
第1話「もじもじマーモット、ジムへ行く」
ぼくの名前はモッティ。
マーモットっていう、ちょっともっさりした草食系の生き物。ジャンプは苦手。足も短い。運動神経?……聞かないでほしい。
そんなぼくが、ある日突然――ジムに通うことにした。
理由は…ないこともないけど、ちょっと恥ずかしいから、今はナイショ。
とにかく、今ぼくは「筋トレ倶楽部HOPPY」っていう町のちいさなジムの前に立ってる。
風が、ジムの看板をカラカラ揺らす。
(今日は行くだけ…行っただけで…うん、えらい)
自分にそう言い聞かせながら、玄関の前でもじもじしてたら、中からごつい人が出てきた。
「こんにちは〜!体験ですか?」
とびきり爽やかで、優しそうな笑顔。でも身体が、カッチカチ。…こわい。

(トレーナーさんだ…たぶん。たぶん岡田さん)
うつむきながら、かろうじて「はい…」って答えたら、岡田さんはにこっと笑ってドアを開けてくれた。
「じゃ、軽く見てみましょうか!」
ジムの中は、想像よりもカラフルで、ちょっとポップだった。
大きな鏡。鉄のバー。踏みしめる床。
あと、麦茶のにおい(なぜかいつもする)。
そして…ジムの奥の方から、ものすごい声が聞こえた。
「うおぉおお!!胸筋が歌ってるブーッ!!」
……えっ、ブー?
恐る恐る見てみると、そこには青いランニングシャツを着たブタがいた。
ベンチプレスでバーベルを持ち上げて、満足そうに天井を見てる。

(うわぁ…ジムって、なんか、想像とちがう…)
さらに別の場所には、ピンクのシャツを着た小鹿が、黙々とスクワットしていた。
静かだけど、なんか目がこわい。というか、フォームがやたら綺麗。もしかして玄人?

(ぼく、ここにいて大丈夫かな……)
急に不安になって、帰ろうかと思ったそのとき。
岡田さんが、そっとぼくの肩に手を置いた。

「“今日は行っただけでえらい”って、自分で思えたなら、それはもう、トレーニングの第一歩ですよ」
その言葉を聞いて、ちょっとだけ…ちょっとだけだけど、足が前に動いた。
今日のトレーニングは「ジムに入って空気を吸う」こと。
たぶん、誰にも気づかれないくらい小さな一歩。
でもぼくにとっては、めちゃくちゃでっかい一歩だった。
今日のひとこと
「自分に“えらい”って言えること。筋トレは、たぶんそこから始まる。」
次回 第二話 「はじめてのスクワット記念日」