HOPPYの仲間たち
~ジムで見つけた僕の居場所~
第6話「このフクロウ、なに者なの?」
「なあモッティ。あのフクロウ、何者ブー?」
ベンチプレスの合間に、ボニーがぽつりとつぶやいた。
隣でストレッチしていたモッティは、ちょっと首をかしげた。

「フクロカさん…?カウンセラーじゃないの?」
「いや、そうなんだけどブー。でも、なんか……ただのカウンセラーじゃない気がするブー」
この数日、ジムの空気が少しだけ変わった。
きっかけは、モッティが初めてフクロカさんと話したこと。
それからというもの、他の仲間たちも少しずつ、フクロカさんの存在を“意識”し始めていた。
「この前さ、フォーム崩れてた時、なんか視線を感じたの。見てたよ、絶対」
とルルが言う。
「でも、近寄ってこないんだよね。不思議」
たしかにフクロカさんは、いつも静かにジムの隅に座っている。
誰かが話しかければ、ふわっと微笑んで答えるけど、こちらから歩み寄らない限り、自分からは何も語らない。
その日も、誰が声をかけたわけでもないのに、気づけばフクロカさんはベンチに座っていた。
ただ、いる。
それだけなのに、安心感がある。
「……あの人、なんであんなにわかるんだろう」
モッティは思い出す。
自分が話したときも、ほとんど何も言わなかったのに、不思議と心が軽くなった。
「それにさ…この前、誰もいない時間帯に見ちゃったんだブー」
ボニーが、ひそひそ声になる。
「フクロカさん……スクワットしてたブー。ガチのフォームで」
「えっ!?」
「しかも、めっちゃ静かに。音立てずに、スーッて。影が床に伸びてて……正直ちょっとゾワッとしたブー」
「トレーナーじゃないのに、なんでそんな…」
「なに者なんだろうね」
3人は、ジムの片隅にいるフクロカさんをちらっと見る。
いつもと同じように、ただ静かに座っているだけ。

でもその瞳は、すべてを見透かしているようでもあり、
何も気にしていないようでもあった。
その夜、ジムの入り口の横に、新しい小さな貼り紙が貼られていた。
「もし話したくなったら、ここに座ってみてください」
小さなベンチの横に、やわらかい文字。
それを見て、誰が貼ったのか、みんななんとなく察していた。
今日のひとこと
「静かにそこにいて、静かに誰かを見ている。ジムの隅にいるそのフクロウは、たぶん、ただのカウンセラーじゃない。」
第7話 「岡田氏パーソナル モッティの場合」