札幌中央区のセミパーソナルジム
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筋トレ倶楽部Hoppy

ようこそHOPPYジムへ ──その扉の奥には、物語がある 4-3

Hoppyの物語

2026年5月10日

第3話「支え合う絆~モッティとボニーの奮闘~」

ジムの片隅、いつもルルがいたベンチのあたりに、モッティの視線がふと止まる。

ダンベルの並び、タオルの置き方、少し傾いたままの床マット。
どれもが、いつも通りだ。

(……ルル。僕たち、がんばってるからな)

心の中でそっと声をかける。
返事はない。でも、どこかで聞いてくれているような気がした。

***

その夜、自宅の食卓。

こももが焼き魚の小骨をうまく取れずに苦戦していた。
モッティがさりげなくほぐして渡すと、こももは嬉しそうに「ありがと」と笑った。

画像

しばらくして、ふと顔を上げる。

「ねえ、兄ちゃん……最近、ルル兄ちゃんの話しないね?」

モッティは箸を止め、少しだけ目を伏せる。

「……うん。しばらく会ってないんだ」

それだけを答えると、会話はそこで終わった。

だが、夜になり、布団に入ってもモッティの心は静かにはならなかった。

(……会ってないだけで、想ってないわけじゃないんだ。僕は、信じてるから。いつかまた……笑って隣で、スクワットしてくれる日を)

誰にも聞こえない独り言が、暗い天井に染み込んでいった。

***

午前中の配送を終え、ボニーは車を停めて缶コーヒーを一口。
窓から見える街並みに視線を投げたその瞬間、あることが頭に浮かんだ。

「……あ」

ジムに来ている高齢の会員たちの顔が思い浮かぶ。
たしか、少しキツそうだった人がいた。休憩中に「もう少しゆっくりできるメニューがあったらなあ」と笑っていたのを思い出した。

「ストレッチとか、軽いやつ……オレたちでも考えられるかもな」

缶を置き、エンジンをかける。
その足は自然とHOPPYへ向かっていた。

***

「岡田さん、ちょっといいすか」

ボニーがジムに現れたのは、昼すぎの静かな時間帯だった。
会員もまばらで、岡田氏は一人、器具のチェックをしていた。

「高齢の人向けに、ゆるいストレッチ会とか……どうですかね?
なんか、最近ちょっと空気も重いし、俺らで少しでも盛り上げられたらって……」

ボニーなりに、選んだ言葉だった。

岡田氏はほんの少し目を見開いて、そして柔らかく頷いた。

「……ありがとう。助かるよ、そういうの。会員さんがそんなふうに言ってくれるの、うれしい」

ボニーは照れくさそうに鼻の頭をこすった。

「いや……オレも、ここに助けてもらってっから」

***

その日の夕方。
HOPPYのホワイトボードに、小さなチラシが1枚貼られた。

《ゆるストレッチ会 はじまります》

モッティが描いたイラストに、ボニーが考えたキャッチコピー。
「まずは体を動かす習慣から!」という一言が添えられていた。

「これ、いいじゃない?」
「行ってみようかしら」

会員たちの間に、少しずつ笑顔が戻ってくる。

***

IRON HELLの寮の一室。
ルルはスマホを開き、ある写真をぼんやりと見つめていた。

モッティとボニー。
3人がジムの前で腕を組んで笑っている姿。

「……合わせる顔がないな……」

ひとりごとのように呟く。

そのあと、スマホを伏せ、トレーニングウェアのままベッドに倒れ込んだ。
膝裏がうずく。肩が張っている。どこもかしこも痛むのに、誰にも「今日は軽くしよう」と言ってもらえない。

「もっと速く」「あと1回」「それじゃ勝てない」——
頭に焼きついた声が、静けさを破る。

毛布にくるまり、小さく丸くなってつぶやいた。

「……でも、戻れない。今さら……」

冷たい蛍光灯だけが、ルルの背中を照らしていた。

***

夜。
清掃が終わった後のジムに、岡田氏が一人、立っていた。

床に残ったモッティの手描きのラインテープ。
受付の横に並んだボニーのストレッチ案内。

「……ありがとう、みんな」

誰に向けたともなく、そう呟いた声は、ほんの少しだけ温かかった。

つづく

第四章
第4話「ルルの帰還~挫折からの再生~」

マンガ新約HOPPY物語