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筋トレ倶楽部Hoppy

ようこそHOPPYジムへ ──その扉の奥には、物語がある 4-4

Hoppyの物語

2026年5月17日

第4話「ルルの帰還~挫折からの再生~」

セッションの最中、ルルの足がふらついた。

「もっと速く!」「腰を落とせ!」「それじゃ勝てない!」

飛び交う声と、自分の呼吸の乱れが重なり合う。頭の奥で耳鳴りがした。

「……っ」

次の瞬間、バランスを崩したルルは、目の前が真っ白になるのを感じた。

***

救護室に横たわるルルのそばには、ゴリラーマンがいた。
氷嚢を替え、額の汗をぬぐいながら、そっと問いかける。

「痛む?」

ルルは首を小さく振った。
鏡に映る自分の顔は青ざめていて、どこか遠くを見ていた。

「岡田さんに言われてたんだ。君のこと、見守ってくれって」

静かに、ゴリラーマンが言った。

「俺、最初はただの任務だと思ってた。でも、今は……本気で思ってるよ。
君がここで壊れないかって、それだけが心配なんだ」

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ルルは返事をしなかった。
けれどその言葉は、ずっと張り詰めていた何かを、ほんの少しだけ緩めてくれた。

***

その夜、ルルは寮のベッドでひとり目を開けていた。

(……おかしいな)

浮かんできたのは、今日のセッションで聞いた言葉。

「速く動け」「体重増やせ」「あと0.1秒縮めろ」

——でも、それって誰にとっての“正解”なんだろう。

HOPPYでは、岡田さんが言っていた。

「それぞれ違う。目標も体も心も、ひとりひとり違うから、向き合い方も変えないといけないんだ」

そういえば、岡田さんは決して「これをやれ」と押しつけてはこなかった。
トレーニングも食事も、人によって違ってよくて、誰かの型を当てはめるようなことは、しなかった。

(……岡田さんは、“育てる”んじゃなくて、“一緒に考えてくれた”)

眠れない夜のなか、考えて、考えて、ルルはようやくひとつの答えにたどり着いた。

(……俺は、ここで変わらなきゃいけない。HOPPYで)

***

翌朝、ルルはクロノスの元へ行き、静かに頭を下げた。

「やめさせてください。……ありがとうございました」

クロノスは一瞬だけルルを見つめ、肩をすくめて鼻で笑った。

「……まあ、ここは君みたいな“甘い”やつには向いてない。お望み通り、戻ればいいさ。ぬるま湯のジムにな」

その言葉に、ルルの胸がチクリと痛んだ。
自分の弱さを言い当てられたようで、悔しさが込み上げた。
けれど、それ以上に——大切な場所を軽く言われたことが、許せなかった。

「……あそこは、誰にとっても本気で向き合える場所です。あなたには、きっとわからない」

そう言って、ルルはもう一度だけ頭を下げ、背を向けた。
歩く足取りは、もう揺れていなかった。

***

ゴリラーマンには、寮の入口で最後の挨拶をした。

「……ごめん。いろいろ気づかせてくれて、ありがとう」

ゴリラーマンは頷いて、ほんの少し寂しそうに笑った。

「君の選んだ道なら、俺は応援する。……またどこかで会えたら、うれしいな」

ルルは小さく笑い返し、頭を下げた。

「うん。……今度会うときは、ちゃんと笑って話せるようになってたいな」

もう迷わなかった。

(合わせる顔がない——なんて、言い訳だった。恥をかきたくない、それだけだったんだ)

(プライドなんてどうでもいい。俺は……もう一度、みんなとトレーニングがしたい)

***

HOPPYのドアを押し開けると、あの懐かしい空気が、ふっと体を包み込んだ。

受付の奥から顔を上げたモッティが、思わず立ち上がる。

「……ルル!?」

ボニーも、シャツのすそを握ったまま、目を丸くしていた。

「うそ……マジか……!」

ルルは小さく頷いた。足が震えていた。でも、踏み出す。

トレーニングルームの奥、バーベルを構えていた岡田氏が、静かに振り返った。

「……戻ってきたな」

その一言に、ルルの喉がつまった。

「……ン………」

それだけしか言えなかった。胸が熱くて、言葉にならなかった。

けれど、言わなきゃ。ここで変わるって決めたんだ。
逃げないって決めたんだ。

——プライドなんて捨てろ、俺。

ルルは床に膝をついた。

「……またここで、やらせてください!」

声が震えた。でも、まっすぐだった。

岡田氏は一歩近づき、そっとルルの肩に手を置いた。

「もちろんだよ。ここは……帰ってきていい場所だからな」

「……戻ってきてくれて、嬉しいよ」

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ルルの目に涙が浮かぶ。

モッティとボニーが、駆け寄ってきた。

「ルル!」

「おかえり!」

3人はその場で抱き合った。

何も言わなくても、全部伝わった。

***

その様子を、カウンターの奥からフクロカが見つめていた。

(……本当に、あなたを待っていた)

静かに目を細めて、心の中でそうつぶやく。

***

ジムの片隅。ルルは再びバーベルを握った。

その姿を見て、周囲の会員たちが、自然と微笑んでいた。

夕日に染まる窓越しに、フクロカの小さな囁きが重なる。

「これが……本当の、再生の始まりね」

つづく


第五章(最終章)絆と秘密の先にあるもの
 第1話「ボニーの解放~赤いコップが紡ぐ絆~」

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