第3話「HOPPYの絆~三人が再び交わる場所~」
朝のHOPPY。
スクワットラックのあたりで、モッティとボニーがいつものように準備運動をしている。
「今日のメニュー、スクワット?」「そうだな。あとベンチも入れるか」
そんな会話に、聞き覚えのある声がふわりと入った。
「……なら、俺も混ぜてよ」
振り返った二人の顔がぱっと明るくなる。そこには、ルルが立っていた。
「ルル!」「おかえり!」
ボニーとモッティが手を挙げ、三人は自然にハイタッチを交わした。
ほんの一瞬で、HOPPYの空気がパッと変わる。器具の音、笑い声、そして互いの呼吸が心地よく響き合っていた。
岡田氏がゆっくりと近づく。
スクワットラックの前でフォームを確認しながら、ルルに一言。
「肩の力が抜けてるな。でも、顔つきは前よりいいよ」
「……ありがとうございます」
短い言葉の中に、たくさんの想いが込められていた。
そして、岡田氏は他の二人にもそれぞれ目を向ける。
「ボニー、重量増えてきたね。前より受けの姿勢が安定してる」
「最近、家で床の上のブリッジしてますから」
「そういう努力、ちゃんと伝わってるよ。モッティ、今日は?」
「こももに頼まれてスクワット復習です」
「そっか、いいね。兄ちゃんだけど、ちゃんとトレーナーでもあるな」
三人はそれぞれの今を語り合いながら、しっかりとバーベルに向き合っていた。
それぞれの心には、過去と、そして未来への決意が静かに宿っていた。
その日の午後。
扉が開き、一人の中年女性がそっとジムに入ってきた。
白い毛並みにふわりとしたスカーフ。少し不安げに見渡していた。
「はじめて……なんですけど……」
岡田氏がカウンターから顔を出す。「どうぞ、見学でも体験でも。今日はご予約いただいてましたよね」
「あ、はい。白雪しずかです……」
女性は小さく頭を下げたが、どこかまだ緊張している様子だった。
そんな彼女に、ボニーがにこやかに声をかけた。
「うち、最初は誰でも不安になりますよ。でも大丈夫です。器具の説明、俺がします」
モッティがにこっと笑って、横から補足する。
「使い方の注意とか、安全にできる方法とか、ちゃんとゆっくり教えますからね」
ルルも横から、「……迷ってるなら、ちょっと一緒に動いてみる? 案外、気が楽になるよ」と言った。
しずかは少し戸惑いながらも、「はい」と頷き、三人に導かれて軽いメニューを試してみることになった。
カウンター奥。
フクロカが記録ノートを開きながら、静かにその様子を見つめていた。
「HOPPYはただ、戻ってくる場所じゃない。新しい誰かの“始まり”でもある」
その言葉が、ページにそっと記された。
その夜。
三人としずかは、ジムの玄関で靴を履きながら談笑していた。
「また来てもいいですか?」としずかが言うと、
ボニーが笑って「いつでも」と答えた。
モッティがドアを開け、夜風が吹き込む。
しずかが岡田氏に「入会、お願いしてもいいですか?」と小さく頭を下げた。
「もちろんです。ここは、あなたの居場所にもなりますよ」と岡田氏。
しずかは嬉しそうに「では、これから皆さん、いろいろ教えてくださいね」と三人に頭を下げた。
ルルが最後に外へ出て、ゆっくりとドアを閉めた。
静かに響く、その音。
フクロカはノートの最終ページに、一文を記す。
――すべては、ほんの小さな一歩から。
そして、そっとペンを置いた。
つづく
最終章
第4話「秘密の扉~あこがれの人はすぐそこにいた~」