札幌中央区のセミパーソナルジム
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筋トレ倶楽部Hoppy

ようこそHOPPYジムへ ──その扉の奥には、物語がある 5-5

Hoppyの物語

2026年6月21日

第5話「未来への軌跡~新しい物語の始まり~」

【三人の“本音”】

まだ陽が昇りきる前の、静かなジムの空気。

開館前のHOPPYに、ボニー、ルル、モッティの3人が自主トレのために集まっていた。

器具の音はない。ただ、深呼吸と、わずかに響く足音。
誰ともなく、ルルが切り出す。

「……言いそびれてたけどさ」

その声に、ボニーもモッティも手を止めた。

「俺、IRON HELLに行ってた時、強くなることだけが正義だって思い込んでた。
でも、あそこでは、誰にも“弱いままでもいていい”なんて言われなかった」

ルルは、静かにバーベルに手を置きながら言った。

「ここに戻ってきて、初めて気づいたんだ。弱さって、追い出すものじゃなくて、抱えててもいいものなんだって」

沈黙の中で、ボニーがふっと笑った。

「……俺もさ。この前、ベニーに会いに行ったんだ。前みたいに“パパ”って呼ばれて。嬉しいのに、悩んだよ。今の俺が、またパパでいていいのかって」

ボニーは手を膝に置き、少しうつむいた。

「でも、ここで変わっていく自分を、あの子にも見せたいって、やっと思えた」

ルルとモッティが、ゆっくりうなずく。

そして、モッティが小さな声で続けた。

「僕、本気で、パーソナルトレーナーになりたいって思ってる。……でもまだ、怖い。こんな僕が誰かを支えられるのかって、自信なくてさ」

それでも彼は、少し笑って言った。

「でも、ここでの経験は、絶対に無駄じゃなかったって、今は思えるよ」

その言葉に、ルルが小さく手を差し出し、モッティと、そしてボニーも手を重ねる。

「……じゃあ、今日もやるか」

3人の声が重なる。

バーベルがわずかに揺れた音が、静かなジムの空気を震わせた。

* * *

【フクロカの語り~支える者の孤独と希望~】

その頃、カウンター裏では、フクロカが一人ノートにペンを走らせていた。
誰もいない時間、誰にも気づかれずに残す記録。彼女の日課だった。

(……私は、戦うために生きてきた。
でも、戦いが終わった時、何をすればいいか分からなかった)

過去の記憶が、ふと浮かぶ。

荒れた土地で、名もなき兵士として生きていた頃。
命令と訓練と、生き残ることだけが自分の役割だった。

(心を閉ざしていた。誰ともつながらず、ただ、任務をこなすだけ。
でも……)

ペンを止め、フクロカは顔を上げた。

(引退した後、色んな場所を経て、HOPPYに来て初めて、自分の「これから」を考えた。誰かの再生を支えることで、自分自身が再生されていくのを感じた)

あのモッティの震える声。
ルルの迷いを含んだ瞳。
ボニーの静かな覚悟。

その一つひとつに、自分が必要とされていた。

(私はもう、兵士ではない。
だけど、この場所で、また誰かの背中をそっと押すことはできる)

ゆっくりとページを閉じる。

「……この先も、誰かの一歩を支え続ける」

その声は小さく、それでいて揺るがぬ決意だった。

* * *

【岡田氏の語り~「支える」ということ~】

朝の光が差し込むHOPPYのフロア。
トレーニングを始めた三人の姿を、少し離れた場所から岡田氏が静かに見ていた。
表情はいつもの笑顔。しかし、その目は深く、どこか感慨に満ちている。

(あいつら、変わったな……)

胸の内で、そっと言葉を紡いだ。

(最初は、どこか心ここにあらずで。
身体を鍛えに来たはずなのに、何かを背負ってるような顔をしてた。
でも今は、違う)

ふと、昔の自分を思い出す。

(俺もかつて、誰かを支えることでしか、自分の価値を見いだせなかった。
でも、なな子と出会って、HOPPYを始めて……ようやく気づいたんだ)

「支えるってのは、ただ引き上げることじゃない。
相手が立ち上がれるまで、そばにいることなんだよな」

そう呟いた声は、空のジムに静かに響いた。

モッティのトレーナーになりたいという言葉。
ルルの戻ってきた背中。
ボニーの柔らかくなった眼差し。

それらすべてが、岡田にとっての“答え”だった。

[梅島なな子の語り ~誰かの希望でありたいから~】

岡田氏がそんなことを考えていたころ、控え室の奥で小さく深呼吸をする姿があった。
梅島なな子――かつてのトップアイドル、今はトレーニー系インフルエンサーとして活動する彼女は、鏡の前でゆっくり自分の顔を見つめていた。

ほんの少し、目元が潤んでいる。

「……ほんと、変わったなあ。私」

彼女は誰にともなくそう呟いた。

(昔はね、“かわいい”と言われることが仕事で、笑顔を絶やさず、誰かの夢の中にいなくちゃって――そんな世界で生きてた。
でもね……ほんとは、怖かった。失敗も、汗も、素顔も、誰にも見せられなくて)

少しだけ、昔の自分の映像がよみがえる。
雑誌の表紙、ライブの歓声、作り笑顔の数々。

「でも、岡田さんは……違ったんだよね」

ふっと微笑む。

(あなたは、私の“がんばる姿”を見て、
『あなたはあなたのままでいいんだよ』って、言ってくれた。
その言葉に、私は救われた)

なな子は、そっとトレーニンググローブをつけながら続ける。

「だから、今こうしてYouTubeに自分の“がんばってる姿”を載せてる。
かつての私みたいに、誰かの前でずっと笑ってなきゃいけないと思ってる人に、
“あなたのままでいいんだよ”って言ってあげたくて」

彼女は、岡田氏が見守るフロアへ一歩踏み出す。
その背中は、まっすぐで、力強い。
もう、誰かの期待に縛られるだけの自分ではない。

彼女は、誰かの“再生の希望”となるために、今日もバーベルを担ぐ。

【フクロカの記録ノートより】

夕暮れのHOPPY。
窓の外には朱に染まる空、遠くから届く鳥の声。
中では、汗を光らせた仲間たちの姿が静かにゆらいでいた。

フクロカはカウンター奥、ノートにペンを走らせている。

(誰かが言った。人生には痛みがつきものだと。
でも私はこう思う。“支えてくれる場所”があれば、人はきっと――何度でも立ち上がれる)

ページをめくると、最初の見開きにはこう書かれている。

「ここは、ただのジムではない」

その言葉を見つめながら、フクロカは静かに目を細める。

(ルルは自分の弱さを受け入れ、ボニーは“パパ”としての新たな覚悟を持った。
モッティは、自分の道を選ぼうとしている。
そして岡田氏も――なな子さんも。
皆、過去の痛みと向き合いながら、未来へと歩き始めている)

ノートの端に、今日の日付を書き込み、最後にこう記す。

「この先も、誰かの一歩を支え続ける。私は、そうありたい」

ペンを置き、フクロカは目を閉じる。
風鈴のような小さな音が、扉のほうから聞こえる。

笑い声、呼吸、バーベルの落ちる音――それらがすべて、確かにこの場所に「生きている」音だった。

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